デザイン制作、チラシ制作、ホームページ制作などをしている方から、こんなお悩みを聞くことがあります。
「修正を何回頼まれても断りにくい」
「『これもついでに』と追加作業が増えてしまう」
「納品したら、元データも渡さないといけないの?」
「デザインの著作権は誰のもの?」
「途中でキャンセルされたら、作業した分は請求できる?」
「見積書だけで仕事を受けているけれど大丈夫?」
制作の仕事では、最初は問題なく進んでいても、途中から
「そこまで料金に含まれていると思っていた」
「修正は何回でもしてもらえると思っていた」
「元データも当然もらえると思っていた」
といった認識の違いが起きることがあります。
こうしたトラブルを防ぐために大切なのは、相手を厳しく縛る契約書を作ることではありません。
修正が何回も続く……どう決めておけばいい?
制作業で特に起こりやすいのが、修正回数の問題です。
例えば、
「もう少し文字を大きくしてください」
「やっぱり写真を変えてください」
「社内で確認したら、別の案が出ました」
と修正が続き、当初予定していた作業時間を大きく超えてしまうことがあります。
そこで契約書や内容確認シートでは、
- 無料修正は何回までか
- どこまでが無料修正に含まれるか
- 「修正1回」をどう数えるか
- 仕様変更や追加案は別料金にするか
- 校了後の変更をどう扱うか
を決めておきます。
例えば、
「修正1回」とは、依頼者が一度にまとめて出した修正依頼に対して、制作者が修正版を1回提出すること
と決めておけば、お互いに分かりやすくなります。
単に「無料修正2回まで」と書くだけではなく、何をもって1回と数えるかまで決めておくことがポイントです。
「これもついでに」は追加料金にできる?
制作を進めていると、
「せっかくなので、こちらも追加できますか?」
「このページも1ページだけお願いします」
と、最初にはなかった作業を頼まれることがあります。
小さな追加でも、積み重なると大きな作業になります。
そのため、
今回の料金に何が含まれているのか
を最初に明確にしておくことが大切です。
例えば、
- 制作するページ数
- デザイン案の数
- 原稿作成を含むか
- 写真加工を含むか
- 印刷手配を含むか
- 公開後の修正を含むか
などを具体的にします。
当初の内容を超える場合は、
追加作業の内容・追加料金・新しい納期を確認してから作業する
というルールにしておくと、後から「それも料金に入っていると思っていた」という行き違いを防ぎやすくなります。
元データも渡さないといけない?
これも制作業では非常に重要なポイントです。
PDFやJPEGなどの完成データと、
IllustratorのAIデータやPhotoshopのPSDデータなど、後から編集できる元データは別に考えます。
納品物が「完成したPDF」であれば、元データまで当然に納品する、という意味ではありません。
そのため、契約時に
元データを納品するのか、しないのか
を決めておきます。
元データを納品する場合は、
- どの形式で渡すのか
- 追加料金が必要か
- 使用しているフォントや素材のライセンスに問題がないか
- 第三者へ渡して編集してよいか
なども確認しておくと安心です。
また、採用されなかったラフ案や制作途中のデータについても、完成品とは分けて考えておく必要があります。
納品したデザインの著作権は誰のもの?
「料金を払ったのだから、著作権も全部依頼者のものになるのでは?」
と思われることがあります。
しかし、制作物を納品したことと、著作権そのものを譲渡することは別です。
契約では、
① 著作権は制作者に残し、依頼者に必要な利用を認める
または、
② 著作権を依頼者へ譲渡する
といった形で整理します。
著作権を制作者に残す場合は、
- ホームページへの掲載
- 印刷物への使用
- SNSへの掲載
- 広告への使用
- 二次利用
- 改変
- 商品化
- 第三者への提供
など、どこまで使ってよいのかを決めておきます。
「納品した後に自由に使えると思っていた」
「別の商品にも使われていた」
といったトラブルを防ぐためにも、著作権の扱いは契約時に確認しておきたい項目です。
写真・フォント・素材の権利にも注意
制作物には、制作者自身が作ったものだけでなく、
- 写真
- イラスト
- フォント
- テンプレート
- 有料素材
- Webサービス
など、第三者が権利を持つものが含まれることがあります。
その場合、制作物の著作権を譲渡したとしても、第三者の素材まで自由に利用できるとは限りません。
利用条件がある素材については、その条件に従う必要があります。
依頼者から提供された写真やロゴについても、
誰が使用許可を確認するのか
を決めておくことが大切です。
生成AIを使う場合も決めておく
最近は、画像作成や文章作成、アイデア出しなどに生成AIを利用するケースも増えています。
制作業務で生成AIを使う場合には、
- 生成AIを使ってよいか
- どの工程で使うか
- 人が最終確認するか
- 個人情報や秘密情報を入力しないこと
- 第三者の権利への配慮
などをあらかじめ決めておく方法があります。
依頼者によっては、
「AIは使わないでほしい」
という希望がある場合もあります。
そのため、生成AIについても、契約前に確認しておくと認識違いを防ぎやすくなります。
途中でキャンセルされたら、どこまで請求できる?
制作途中のキャンセルも、よく問題になるところです。
例えば、
| 制作の段階 | 考え方の例 |
|---|---|
| 制作開始前 | すでに発生している実費などを確認 |
| 作業開始後 | 進んでいる作業分を精算 |
| 初稿提出後 | 初稿作成までの作業分を考慮 |
| 印刷発注後 | 取消しできない印刷費なども確認 |
というように、制作がどこまで進んでいるかによって考えると分かりやすくなります。
契約書では、
「制作開始前は○%、初稿提出後は○%」
のように決める方法もありますし、
実施済みの作業分+取消しできない実費を精算する
という方法もあります。
ただし、ここで注意したいのが、依頼者が事業者なのか、事業目的ではない個人なのかという違いです。
個人のお客様にも同じ契約書を使っていい?
制作業の契約書は、
事業者向けと事業目的ではない個人のお客様向けを分けて考えた方がよい場合があります。
個人のお客様との契約では、消費者契約法など、消費者を保護するルールも考慮する必要があるためです。
例えばキャンセル料についても、
実際の損害と比べて高すぎるキャンセル料になっていないか
という点に注意が必要です。
損害賠償についても「制作者はいかなる場合も一切責任を負わない」
といった一方的な内容には注意が必要です。
そのため、単発制作であっても、事業者向け単発契約書と個人のお客様向け単発契約を分けて用意しておく方法があります。
個人事業主は「事業者」?それとも「個人」?
ここは特に分かりにくいところです。
個人事業主だから「個人向け契約書」というわけではありません。
ポイントは、
法人か個人かではなく、「何のための依頼なのか」
です。
例えば、個人事業主として美容室を経営している方が、
「お店のホームページを作ってほしい」
「お店のチラシを作ってほしい」
と依頼する場合は、事業のための依頼です。
この場合は、事業者向けとして考えます。
一方、同じ美容室の経営者が、
「自分の結婚式のプロフィールブックを作ってほしい」
と依頼する場合は、通常は事業とは関係ありません。
この場合は、個人のお客様向けとして考えます。
| 依頼者 | 依頼の目的 | 契約書 |
|---|---|---|
| 法人・会社 | 事業のため | 事業者向け |
| 個人事業主・フリーランス | 自分の事業のため | 事業者向け |
| 個人事業主・フリーランス | 私生活のため | 個人向け |
| 一般の個人 | 私生活のため | 個人向け |
見積書だけでは足りないの?
見積書にも、
- 制作内容
- 金額
- 数量
- 納期
などを書くことができます。
そのため、見積書が意味のないものということではありません。
ただ、見積書だけでは、
- 修正回数
- 追加作業
- 著作権
- 元データ
- 第三者素材
- 生成AI
- キャンセル
- 秘密保持
- データ保管
などまでは十分に決められていないことがあります。
そこで、
見積書+契約書+内容確認シートという形で整理する方法があります。
すべてを長い契約書に書く必要はありません。
「契約書+内容確認シート」に分けると使いやすい
制作業では、
契約書=毎回共通して使うルール
内容確認シート=今回の案件だけの具体的な条件
と分けると運用しやすくなります。
契約書には、
- 追加作業
- 修正
- 納品
- 支払
- 著作権
- 元データ
- キャンセル
- 秘密保持
などの共通ルールを書きます。
一方、内容確認シートには、
- 今回何を作るか
- 制作料金
- 初稿日
- 納品日
- 無料修正回数
- 著作権の扱い
- 元データの有無
- 生成AIの利用
- 実績公開の可否
などを記載します。
これなら、案件ごとの条件を確認しやすくなります。
単発と継続でも契約書を分ける
もう一つ確認したいのが、
今回だけの依頼なのか、継続的な仕事なのか
という点です。
例えば、
単発
- チラシ1件
- ロゴ1件
- ホームページ1サイト
であれば、
単発契約書+内容確認シート
という方法があります。
一方、
継続
- 毎月のSNS画像制作
- 定期的なチラシ制作
- Webサイトの更新・保守
であれば、
基本契約書+案件ごとの内容確認シート・発注書
という方法が考えられます。
取引の形に合わせて契約書を使い分けることが大切です。
契約書は「相手を縛るため」ではありません
契約書というと、「細かいことを書いたら、お客様に嫌がられないか」と心配される方もいます。
しかし、契約書の目的は、相手を縛ることではありません。
むしろ、
何を作るのか
いくらなのか
修正は何回までなのか
追加料金はいつ発生するのか
元データは渡すのか
著作権はどうなるのか
キャンセルしたらどうなるのか
を仕事の前に確認しておくことで、依頼者にとっても安心して依頼しやすくなります。
「厳しい契約書」ではなく、
依頼者と制作者が同じ理解で仕事を始めるための契約書を作ることが大切です。
こんな制作事業者の方は、一度契約書を見直してみませんか?
例えば、
- 見積書だけで仕事を受けている
- 修正が何回も続いて困ったことがある
- 「これもついでに」と追加作業を頼まれる
- 元データを渡すか迷っている
- 著作権の扱いを決めていない
- キャンセルされたときのルールがない
- 企業からの仕事が増えてきた
- 個人のお客様からも仕事を受けている
- 今の契約書が自分の仕事に合っているか分からない
という場合は、一度契約内容を整理しておくと、その後の仕事が進めやすくなります。
花咲く行政書士事務所の契約書作成サポート
花咲く行政書士事務所では、デザイン、チラシ、ホームページ制作などを行っている個人事業主・フリーランスの方の制作業務委託契約書の作成・見直しを承っています。
一般的なひな形をそのまま使うのではなく、
- 普段どのような仕事を受けているか
- どのようなトラブルを防ぎたいか
- 修正をどのように扱っているか
- 追加作業をどうしたいか
- 著作権をどうしたいか
- 元データを納品するか
- 事業者と個人の両方から依頼を受けるか
などを確認しながら、実際の仕事で使いやすい契約書を一緒に整理します。
例えば、
事業者向けの単発制作
→ 制作業務委託契約書+内容確認シート
個人のお客様向けの単発制作
→ 個人向け制作業務委託契約書+内容確認シート
継続的な制作業務
→ 基本契約書+案件ごとの内容確認シート・発注書
といった形で、取引に合わせたご提案が可能です。
「見積書だけで仕事をしているので、一度きちんと契約書を作りたい」
「今使っている契約書を見直したい」
「自分の仕事の場合、どこまで契約書に書けばよいか分からない」
という方は、お気軽にご相談ください。



