障害のあるお子様がいるご夫婦が考えておきたいこと
「私たち夫婦も高齢になってきました。任意後見は、いつ始めればよいのでしょうか」
障害のあるお子様をお持ちの親御様から、このようなご相談をいただくことがあります。
任意後見を考える際には、ご夫婦の年齢や健康状態、財産管理をどちらが担当しているか、不動産や預貯金の名義、ご親族や支援者の状況、お子様の生活状況などによって、適切な方法は変わります。
任意後見は「いつ始めるか」より「誰に頼むか」が大切
任意後見を「何歳くらいで契約すればよいですか?」
という「時期」が気になる方が多いのですが、
特にご夫婦の場合、年齢が近いため、どちらが先に判断能力が低下するかは分かりません。
一方がお元気であっても、その後もう一方も支援が必要になる可能性があります。
そのため任意後見をお願いする方は、できればご夫婦よりも年齢が若く、将来にわたって長く支援を続けられる方を候補にすることが大切です。
親族であれば、お子様や甥・姪などが考えられます。
身近に適任の方がいない場合には、司法書士・行政書士などの専門職、後見業務を行っている法人やNPO、高齢者等終身サポート事業者などを検討する方法もあります。
障害のある子がいる場合の任意後見受任者の選び方
障害のあるお子様がいらっしゃる場合には、単にご夫婦の預貯金や財産を管理してくれる人を探せばよい、ということではありません。
大切なのは、
「親ができなくなった後も、お子様の生活状況を理解し、必要な福祉サービスや支援者につないでくれる人か」
という視点です。
たとえば現在、
- お子様の施設利用料を親御様が支払っている
- 毎月一定額の生活費を援助している
- 福祉サービスや病院との手続を親御様がしている
- 行政から届く書類を親御様が確認している
- お子様の生活上の相談を親御様が支援者と行っている
といったことがあれば、「親ができなくなった時に誰が引き継ぐのか」を考えておく必要があります。
そのため、受任者を考える際には、
- ご夫婦より若い世代の中から候補者を考える
- その方に将来何をお願いしたいのか整理する
- 実際に引き受けてもらえるか相談する
- そのうえで任意後見契約の内容や時期を考える
という順番で整理すると分かりやすくなります。
任意後見はいつ始める?夫婦の場合のタイミング
では、任意後見契約は早ければ早いほどよいのでしょうか。
必ずしも、今すぐご夫婦それぞれが別の方と任意後見契約を結ばなければならない、ということではありません。
たとえば、お子様の生活費や施設費などに使う資金を、ご夫婦の一方だけの口座に集中させず、それぞれが一定程度管理できるようにしておけば、一方が銀行手続を行いにくくなった場合でも、もう一方が対応できる可能性があります。
ただし、単純に一方の財産をもう一方へ移せばよいという意味ではありません。贈与や財産管理上の問題もありますので、具体的な資金の動かし方については個別に検討する必要があります。
任意後見はいつ始める?夫婦の場合のタイミング
本当に困るのは、ご夫婦二人とも、お金の管理や契約、行政手続などを行うことが難しくなった場合です。
そのため、任意後見を具体的に検討する一つの時期として、
- 物忘れが増えてきた
- 入院することが増えてきた
- お金の管理が以前より負担になってきた
- 契約書や役所からの書類を理解することが難しくなってきた
- 夫婦の一方だけでは将来が心配になってきた
といった変化が見られた時が考えられます。
ただし、ここで重要な注意点があります。
任意後見契約は、本人が契約の内容を理解し、自分の意思で契約できるうちに結んでおく必要があります。
任意後見制度は、本人に十分な判断能力がある段階で、将来誰にどのような事務を任せるかを公正証書による契約で決めておき、判断能力が不十分になった後に支援を開始する制度です。
そのため、
「認知症になってから考えればよい」
ではなく、
「まだ自分で内容を理解して決められるうちに、次に支えてくれる人を考えておく」
ことが大切です。
任意後見はいつ始める?夫婦の場合のタイミング
障害のあるお子様がいるご家庭では、任意後見だけを単独で考えるより、
今できることと、将来必要になることを分けて整理する
と考えやすくなります。
今は、
- ご夫婦それぞれの財産状況を整理する
- お子様のために毎月どのくらいのお金を使っているか確認する
- どの手続を親御様が行っているのか書き出す
- 支援者や福祉サービスの連絡先をまとめる
- 将来お願いできそうな人を考えておく
といった準備をしておきます。
任意後見契約は公正証書で作成します
任意後見契約は、通常の契約書を作成するだけでは成立せず、公正証書によって契約する必要があります。
実際に任意後見による支援が始まる時には、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所の手続を経て任意後見監督人が選任され、任意後見人による支援が開始されます。
そのため、公正証書を作る前に、
「誰にお願いするか」
「何をお願いするか」
「障害のあるお子様について、現在親が行っている支援をどう引き継ぐか」
を整理しておくことが重要です。
花咲く行政書士事務所でお手伝いできること
花咲く行政書士事務所では、任意後見契約を検討されている方について、いきなり契約書を作るのではなく、まず現在の生活状況や将来のご希望を整理するところからお手伝いしています。
特に、障害のあるお子様がいらっしゃるご家庭については、
- ご夫婦が現在行っている財産管理の整理
- お子様のために行っている支援内容の整理
- 将来、誰に何をお願いしたいのかの整理
- 任意後見契約の内容の検討
- 財産管理等委任契約など、生前の支援方法の検討
- 公証役場に提出する任意後見契約文案の作成支援
- 公証役場との作成に向けた調整
- 公正証書遺言や死後事務委任契約などを含めた将来の備えの整理
などを、ご事情に応じて一緒に考えていきます。
「任意後見をした方がよいのか分からない」
「誰に頼めばよいか決まっていない」
「障害のある子どもの将来が心配だが、何から始めればよいか分からない」
という段階でも大丈夫です。
まずは、「今、親がしていること」と「親ができなくなった後に残ること」を整理するだけでも、将来への備えが見えやすくなります。
任意後見は、「何歳になったら始める」という一律の答えがあるものではありません。
まず誰に頼むかを考える。
今は夫婦で対応できる準備をする。
そして、どちらか一方に変化が出てきた時には、二人とも支援できなくなる前に次の支援者へつなぐ。
障害のあるお子様の「親亡き後」を考えるうえでも、この順番で準備していくことが大切です。


