「障がいのある子どもがいるが、遺言書はいつ作ればよいのでしょうか」
このようなご相談をいただくことがあります。
特に、ご夫婦が50代くらいですと、
「まだ遺言書を書くには早いのではないか」
と思われる方も多いかもしれません。
しかし、障がいのあるお子様がいらっしゃるご家庭では、単に年齢だけで考えるのではなく、お子様の将来の生活や財産管理まで含めて、少し早い段階から遺言について考えておくことに大きな意味があります。
今回は、ご家族の詳しい状況や財産内容、お子様の生活状況などを個別に確認していない段階でのご相談をもとに、一般的な考え方をご紹介します。
実際には、ご夫婦の財産状況、お子様それぞれの生活状況や支援内容、現在の財産管理の方法、今後の生活設計などを確認したうえで、個別に検討する必要があります。
障がいのある子がいる場合、まず財産と生活費を整理する
遺言書を作ろうと思ったとき、すぐに「誰に何を相続させるか」を決める必要はありません。
まずは、現在の状況を整理することから始めます。
たとえば、
- ご夫婦それぞれがどのような財産を持っているのか
- 預貯金や不動産はどちらの名義になっているのか
- お子様それぞれに現在どのくらいの生活費がかかっているのか
- 施設費、医療費、福祉サービスなどの負担はいくらあるのか
- お子様ご本人の収入や預貯金はどの程度あるのか
- 将来、お子様の生活のためにどの程度の財産を残したいのか
といったことを整理していきます。
大切なのは、「今ある財産」だけではなく、「お子様が将来生活していくために必要なお金」も一緒に考えることです。
夫が先に亡くなった場合、妻が先に亡くなった場合を考える
次に、
- 夫が先に亡くなった場合
- 妻が先に亡くなった場合
- 最終的にご夫婦お二人とも亡くなった場合
の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
特に障がいのあるお子様がいらっしゃる場合には、最初の相続だけではなく、最終的にご夫婦二人とも亡くなった後、お子様にどのように財産を残すのかまで考えておくことが重要です。
遺言書がないと、相続人全員で遺産分割が必要になる
たとえば、ご主人が先に亡くなり、相続人が奥様とお子様お二人であれば、遺言書がない場合、原則として3人で遺産の分け方を決めることになります。
ここで問題になることがあります。
お子様ご自身で、
「どの財産を誰が取得するのか」
「この遺産分割内容でよいのか」
ということを十分に理解して判断し、合意することが難しい場合です。
このような場合には、お子様に代わって法律上の手続きを行うため、成年後見制度の利用が必要になることがあります。
遺産分割のために成年後見制度が必要になることも
お子様ご自身で遺産分割について判断することが難しい場合には、成年後見人等が本人に代わって手続きを行うことがあります。
さらに、たとえば奥様自身も相続人であり、奥様がお子様の成年後見人でもある場合には注意が必要です。
奥様とお子様は、同じ相続財産についてそれぞれ取り分を持つ立場になります。
このように利害が対立する場合には、そのまま成年後見人がお子様を代理して遺産分割を行うことができず、家庭裁判所で別の代理人を選任する手続きが必要になる場合があります。
つまり、遺言書がないことで、相続が発生した後に、
成年後見制度の申立てや家庭裁判所での手続きが必要となる可能性がある
ということです。
ご家族にとっては、精神的にも事務的にも大きな負担になることがあります。
障がいのある子がいる家庭では、50代から遺言を考えても早すぎない
「50代で遺言書を作るのは早いですか」
というご質問もあります。
一般的には、遺言書を作る年齢に決まりはありません。
ただし、障がいのあるお子様がお二人いらっしゃるような場合には、50代から将来の財産承継について考え始めても、決して早すぎるとは思いません。
むしろ、
「もっと年を取ってから考えよう」
と先送りするよりも、元気で判断能力が十分にあるうちに、ご夫婦で一度方向性を話し合っておくことが大切です。
夫婦それぞれで遺言書を作ることを検討する
たとえば、
「夫が先に亡くなった場合は妻へ」
「妻が先に亡くなった場合は夫へ」
という考え方があります。
ただし、それだけでは十分とは限りません。
その後、ご夫婦二人とも亡くなった場合に、
お子様お二人へ最終的にどのように財産を残すのか
まで考えておく必要があります。
また、ご夫婦で同じような方針の遺言を作成する場合でも、夫婦連名で1通の遺言書を作るのではなく、ご主人と奥様がそれぞれ別々に遺言書を作成します。
夫婦相互に遺言を作成する場合にも、一次相続だけでなく、その後の二次相続まで見据えて内容を検討することが大切です。
「財産をどう残すか」と「誰が管理するか」は分けて考える
障がいのあるお子様がいらっしゃる場合には、もう一つ大切な視点があります。
それは、
親の財産をどのように子どもへ残すか
ということと、
子どもが受け取った財産を、その後どのように管理するか
は別の問題だということです。
遺言書によって、親の財産をどのように承継させるかを決めることはできます。
一方、お子様ご自身で財産管理が難しい場合には、将来的に成年後見制度の利用が必要になることも考えられます。
そのため、遺言書について考える時期は、同時に、
「将来、成年後見制度をいつ、どのように利用するのか」
を考え始めるタイミングにもなります。
遺言書は元気なうちに考えておく
遺言書は、ご本人が内容を理解し、自分の意思で決めることができるうちに作成する必要があります。
そのため、
「必要になってから作ればいい」
というよりも、
まだ元気で、ご夫婦で落ち着いて将来について話し合えるうちに準備する
ことをおすすめします。
最初から遺言書の内容を決める必要はありません。
まずは、
- ご夫婦の財産を整理する
- お子様それぞれの生活費や将来必要になるお金を整理する
- 夫婦のどちらが先に亡くなった場合も考える
- 最終的にお子様へどのように財産を残すか考える
- 必要に応じて成年後見制度についても検討する
という順番で進めると分かりやすくなります。
花咲く行政書士事務所でお手伝いできること
花咲く行政書士事務所では、障がいのあるお子様がいらっしゃるご家庭について、遺言書を作ることだけを目的にするのではなく、まずご家族の状況や将来の希望を整理するところからお手伝いしています。
たとえば、
- ご夫婦それぞれの預貯金・不動産などの財産整理
- お子様それぞれに現在かかっている生活費・施設費・医療費などの整理
- 今後、お子様の生活のためにどの程度の財産を残す必要があるかの整理
- 夫が先に亡くなった場合、妻が先に亡くなった場合の相続内容の整理
- ご夫婦お二人とも亡くなった後に、お子様へどのように財産を残すかの検討
- ご夫婦それぞれの遺言内容の整理
- 公正証書遺言の文案作成
- 遺言執行者を誰にするかの検討
- 公証役場への必要書類や文案の提出、作成に向けた調整
- 任意後見契約など、ご夫婦自身の将来への備えの整理
- 成年後見制度を検討する時期についての情報整理
などを、ご家庭の状況に応じて一緒に確認していきます。



