任意後見契約のき・ほ・ん その2

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任意後見制度でできること

任意後見契約における委任者(本人)は、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護または財産の管理に関する事務(法律行為)の全部または一部について、

自由に範囲を定めて、 任意後見人に代理権を付与して、その事務を委託することができます。

ここで大事なポイントが2点あります。

一つは「委任できるのは 法律行為であること」です。

「法律行為」というのは、「行ったことが法律上の効果を生じる行為」のことです。、それを行うことで「権利を取得したり、義務を負ったりするような」ことを言います。

たとえば、介護デーサービスを受けるための手続きをする。というのは法律行為です。

具体的に言うと・・・

「ご本人に介護保険のデイ・サービスを受けてもらう・・・言い換えれば 本人は、デイサービスを受ける権利を得る

そして、「その費用を支払う」・・言い換えれば、費用を払う義務がある といった言葉どが法律行為に該当します。

もう一つのポイントは「代理権を付与」というところです。

代理権のみであって まず取り消し権がありません。

任意後見制度は本人の意思で、将来のために後見人予定者を選んでおく制度ですので、「本人の意思決定」をとても尊重する制度です。
つまり、本人の行為を取り消すことが出来ないのは、本人の自由意志を重視した結果といえます。

よって、「本人が不利益な契約を結んでしまう」「不必要な高額商品を購入してしまう」という場合は任意後見人の立場から“取消権”という権限で対応することができません。
一方、法定後見人には取り消し権があるので、ここは任意後見の弱点でもあります。

他人の行為に対して賛成の意思を示す。同意権も付与されません

委任できる法律行為には3つのカテゴリーがあります。

財産管理事務

本人の預金の管理、 不動産その他の重要な財産の処分(売買契約や賃貸借契約の締結等) または遺産分割等の財産の管理に関する法律行為の全部または一部

身上監護

 施設入所契約その他の介護サービスの提供を受けるために必要な契約や医療契約の締結等の生活または療養看護 (身上監護) に関する法律行為の全部または一部

訴訟行為

上記の事務に関して生じる紛争について弁護士に訴訟委任をする権限を有します。

任意後見制度でできないこと

事実行為や一身専属的事項は、 任意後見契約において任意後見人に委託することはできません。

先ほど 委任できることとして「法律行為」を上げました。事実行為は、法律行為の反対用語です。

事実行為」とは、「それを行っても、法律上の効果を生まない行為」ということになります。

本人のデイサービスの手続きを行うのは法律行為です。では、「ご本人をデイ・サービスの拠点まで連れてゆく行為」で、ご本人の手を引いてセンターまで一緒に行くこと自体は、

何の権利も義務といった法的な効果を生むものではないため「事実行為」と判断されます。

また、ご本人の買い物に付き合うことや、料理を作ってあげることなどは、いずれも「事実行為」となります。

後見人の本来の仕事は、たとえば「デイ・サービスのメニューを選んで契約し、そのサービス利用料を支払うこと」であって、「ご本人をそこまで連れてゆくこと」は後見人の責務には含まれないということを理解していただければと思います。

「自己」以外の法律行為

法律行為であっても、委任できるのは「自己」の法律行為に限定されています。具体的には、障がいがある子を有する親が任意後見契約をした場合に、子の生活支援の目的もあわせて契約することはできません。

あくまで「自己」の事務の委任に限定されています。
 

一身専属的事項

結婚や子の認知などの身分行為は、委任することができません。
 

医療行為の同意

手術などの身体組織の一部の切除を伴う重大な医的侵襲行為に対する同意は、委任することができません。
 

死後の事務

任意後見契約は、本人の死亡によって終了します。よって、葬儀、納骨などの死後に発生する事務の委任はすることができません。この死後事務の委任をしたい場合は、別途「死後事務委任契約」をすることが必要になります。

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