事実婚のパートナーと安心して老後を迎えるために ― 終活のススメ

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結婚の形はそれぞれ・知っておきたい法律のポイント

近年、「事実婚」や「内縁関係」を選ばれるカップルが増えています。婚姻届を出さずとも、お互いを人生のパートナーとして共に生活する選択は、自由で柔軟な関係性として尊重されています。

しかしながら、現行の民法や社会制度の多くは、「法律婚」(婚姻届を提出した夫婦)を前提に構築されているため、事実婚のままでは次のような制約が生じる場面があります。

パートナーに財産を残したいと思っても、相続権はない

民法上、相続人になれるのは配偶者と血族(子・親・兄弟姉妹)に限られます。事実婚のパートナーには「法定相続権」がありません。つまり、何もしなければ財産を遺せないのです。

遺言書の作成のススメ

遺言書の作成により、「遺贈」という形で財産を遺す必要があります。

また、遺言書の中で、

  • お二人のお墓についての記載
  • 葬儀の喪主(祭祀承継者)の指定(パートナーに指定)

も記載しておくと、万が一のときにも希望がきちんと届きます。

医療・介護の場面で「家族」として認められないことも

パートナーが倒れたとき、病院で「あなたはご家族ですか?」と問われて困った、というケースは少なくありません。事実婚の場合、法的には「家族」として認められないことがあるためです。

そんな万が一にそなえて、

  • 医療同意書・委任状を作成しておく
  • 任意後見契約を結んでおく

ことで、パートナーとしての権限を明確にしておくことができます。

医療同意書・委任状の作成

医療同意書とは、「この人を私の医療方針の決定者として委ねます」という意思を明確にする文書です。

📌 医療同意書を作成するメリット

  • 緊急時に、パートナーが医師の説明を受け、治療方針について判断できる
  • 延命措置や緩和ケアなどの選択肢について、希望を代理伝達してもらえる
  • 病院によっては、医療同意書がないと本人以外に説明をしないこともあるため、準備しておくと安心

💡本人の署名と捺印が必要であり、公正証書にすることでより確実性が増します。


任意後見契約の締結

任意後見契約とは、将来、判断能力が衰えたときに備えて、財産管理や医療・介護に関する手続を事前に信頼できる人に委ねる契約です。

事実婚のパートナーは、成年後見制度(法定後見)では「配偶者」として申立てができませんが、任意後見契約を結んでおけば、婚姻届がなくても後見人として選任されます

📌 任意後見契約でできること

  • 預金の管理や介護施設の契約手続
  • 福祉サービスの申請や更新
  • 不動産の管理・処分(内容によっては代理権目録に明記)
  • 医療に関する意思決定の補助 など

💡任意後見契約は公正証書で作成し、発効には家庭裁判所の監督人選任が必要です。将来を見据えて早めの準備が安心です。

死後の手続もできない?

死亡届、火葬許可申請、賃貸住宅の明渡し、公共料金の解約など、死後の多くの事務手続は「相続人」が行うことが原則です。事実婚のパートナーでは、スムーズに対応できないことも。

死後事務委任契約で「できること」

死後事務委任契約を結んでおけば、パートナーが安心して死後の事務を行うことができます。

死後事務委任契約でできること

  • 賃貸住宅の解約と遺品整理
  • 公共料金やクレジットカードの解約
  • 死亡届の提出や火葬・埋葬の手続き
  • 医療費・葬儀費用の支払い
  • SNSやネット契約の整理(デジタル遺品対応)
  • ペットの譲渡先の指定や世話の委任 など

💡「遺言では対応できない生前の契約」を実行できるのが、この契約の特徴です。


花咲く行政書士事務所がお手伝いいたします。

法律婚と異なり、事実婚では「何もしない」ままだと、パートナーに思いが届かないことが少なくありません。でも、適切な準備をしておけば、大切な人にきちんと想いを託すことができます。

「私たちらしい形で、最期までともに歩むために」
事実婚だからこそ、できる準備があります。気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

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