「厳しい契約=よい契約ではない」理由
保護猫や保護犬を新しい飼い主さんへ譲渡するとき、
「この子を最後まで大切に育ててほしい」
「もうつらい思いをさせたくない」
という気持ちから、譲渡契約書にできるだけ細かく条件を書いておきたい、と考える方は少なくありません。
例えば、
- 完全室内飼育にしてほしい
- 脱走防止対策をしてほしい
- 去勢・避妊手術をしてほしい
- 定期的に健康診断を受けさせてほしい
- 長時間の留守番をさせないでほしい
- 他の動物を飼わないでほしい
- 食事や猫砂、おもちゃにも気を配ってほしい
- 歯のケアをしてほしい
- 毎日できるだけ遊ぶ時間を作ってほしい
など、譲渡する側からすると、どれも大切な希望です。
ただし、ここで大切なのは、
「厳しい契約=よい契約ではない」
ということです。
条件を細かく、厳しく定めれば安心できるように思えますが、実際には、条件が細かすぎることで譲受人が負担に感じたり、少し守れなかっただけでも契約違反の問題が生じたりすることがあります。
譲渡契約書で大切なのは、条件を増やすことではなく、
本当に守ってほしいことを明確にし、双方が理解し、現実に守ることができる内容にすること
です。
譲渡契約書は「条件を多く書けば安心」とは限りません
譲渡契約書では一般に、
- 終生飼養すること
- 適切な食事や医療を提供すること
- 虐待や遺棄をしないこと
- 無断で第三者へ譲渡しないこと
- 脱走防止に努めること
- 飼育が困難になったときは譲渡者へ連絡すること
などを定めます。
こうした基本的な事項は、動物の生命や安全を守るために重要です。
一方で、
「留守番は何時間以内」
「2~3日に1回は歯のお手入れをする」
「毎日何分以上遊ぶ」
「この商品を使う」
など、日常生活の細かなところまで契約上の義務にすると、少し守れなかっただけでも「契約違反なのか」という問題が生じます。
そのため、譲渡契約書を作るときは、絶対に守ってもらいたい契約条件とできる限り守ってほしい飼育上の希望
を分けて考えることが大切です。
「契約条件」に向いている内容
契約書に盛り込むのに比較的適しているのは、動物の生命、健康、安全に直接関係する事項です。
例えば、
- 完全室内飼育
- 玄関、窓、ベランダ等の脱走防止対策
- 去勢・避妊手術
- 必要な医療を受けさせること
- 飼育困難時に勝手に第三者へ譲渡しないこと
- 虐待、遺棄をしないこと
- 譲渡者の承諾なく所有権を移転しないこと
などです。
ただし、ここでも内容を細かくしすぎると、現実の飼育状況と合わなくなる場合があります。
契約書では、守ってほしい目的を明確にしつつ、現実に運用できる内容にすることが重要です。
「飼育上のお願い」として分けた方がよい内容
一方で、次のような事項は、契約書とは別に「飼育に関するお願い」として整理する方法があります。
例えば、
- 食事、おやつ、サプリメントの選び方
- 猫砂やトイレ環境への配慮
- おもちゃやキャットタワーの安全性
- 日光浴や上下運動ができる環境
- 歯のお手入れ
- 遊ぶ時間の確保
- 年齢に応じた留守番時間への配慮
などです。
これらはもちろん大切なことですが、年齢や体調、生活環境によって最適な方法が変わります。
特定の商品名や具体的な時間まで契約書に固定してしまうと、後から状況が変わった場合に対応しにくくなります。
そのため、
契約違反として扱う事項なのか
それとも
できる限り大切にしてもらいたいお願いなのか
を分けることが大切です。
「他の動物を飼わない」という条件は慎重に
「この子だけを終生飼育してほしい」という希望もあります。
ただし、
「今後一生、他の犬や猫を飼ってはいけない」
という条件は、譲受人の将来の生活を長期間制限する内容になります。
そのため、
- 一切禁止するのか
- 譲渡者の承諾があれば可能にするのか
- 当該動物の健康や性格に問題がなければ可能にするのか
など、契約前に双方で十分に確認しておく必要があります。
留守番時間も「時間だけ」で決めない方がよい場合があります
子猫や子犬の場合、
「長時間一人にさせたくない」
という希望は自然です。
ただ、具体的な時間をそのまま契約上の義務にすると、急な用事や交通事情などで少し時間を超えただけでも契約違反になる可能性があります。
そのため契約書では、
「年齢や健康状態に応じ、長時間の留守番を避け、必要に応じて家族、知人、ペットシッター等による世話を確保する」
などとし、
具体的な時間は「飼育に関するお願い」として示す方法も考えられます。
契約違反=すぐ返還、でよいかも検討が必要です
譲渡契約書の中には、
「契約条件を守らなかった場合は返還を求めることができる」
という条項が入っていることがあります。
ただ、
- 写真報告を一度忘れた
- 健康診断が少し遅れた
- 一時的に留守番時間が長くなった
場合と、
- 虐待
- 遺棄
- 無断譲渡
- 不適切な飼育を繰り返している
場合とでは、重大性が違います。
軽微な違反の場合はまず改善を求め、それでも改善されない場合に返還を求める。
一方で、虐待や遺棄など緊急性が高い場合は直ちに返還を求める。
このように段階を分ける方が、契約として使いやすくなる場合があります。
契約書を作る前に、譲受予定者と条件を確認しておく
契約書を完成させる前に、
譲受予定者と条件をすり合わせておくこと
も重要です。
譲渡する側が「絶対に守ってほしい」と思っていても、相手方が現実には対応できない条件であれば、契約成立後のトラブルにつながる可能性があります。
まず、
絶対に守ってもらいたい条件とできる限りお願いしたい飼育上の希望
に分け、譲受予定者が対応できる内容かどうかを確認してから契約書に落とし込むことをおすすめします。
行政書士に依頼するメリット
保護猫・保護犬の譲渡契約書は、希望事項を並べるだけでなく、
- 契約条件として適切か
- 内容が厳しすぎないか
- 他の条項と矛盾していないか
- 違反した場合にどうするか
- 返還や再譲渡をどう扱うか
- トライアル期間と正式譲渡をどう整理するか
など、契約全体のバランスを確認することが重要です。
厳しい契約を作ることが目的ではなく、実際に守られ、動物を守るために機能する契約にすることが大切です。
花咲く行政書士事務所では、保護猫・保護犬の譲渡契約書作成のご相談を承っています
花咲く行政書士事務所では、まずご相談の中で、
- どの条件を特に大切にしたいのか
- 絶対に譲れない条件は何か
- 相手方と相談して決めてもよい事項は何か
- 「契約条件」と「飼育上のお願い」をどう分けるか
を整理します。
そのうえで、正式にご依頼いただいた場合には、ご希望や譲受予定者との合意内容に合わせて、譲渡契約書や「飼育に関するお願い」等の書面を作成します。
大切な家族を安心して託すために必要なのは、条件をできるだけ厳しくすることではありません。
「厳しい契約=よい契約ではない」
双方が内容を理解し、無理なく守ることができ、そして何より動物の安全と幸せにつながる契約にすることが大切です。
保護猫・保護犬の譲渡契約書についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


